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元服した時、精通を迎えた時、初陣の時。 すべての機会を逃したのは佐助の意地だった。 精通を迎えた若君が相談するのは側にいた佐助で、佐助は初めての精を飲み下し、快楽を教えた。 戦の高ぶりを処理してやった事もあるが、交わりはしなかった。 幸村から求めさせてやらなければ意味がない、ずっとそう思っていたからだ。 下働きの娘と幸村が笑いながら話していた。 まだ若い娘は守ってやりたくなるような可愛らしさ、けれど娘らしく円やかな身体つきをしていて。 それは俺のものなのに。 あからさまに幸村を誘った事はない。 言葉の端で、仕草で、誘った。 艶っぽさとは無縁のような佐助だが、不思議と今まで男を誘うのに失敗したことはない。 だが、幸村は。 確かに佐助の誘いを理解したようなのに、何も言わなければ何もしないのだ。 他の男と寝なかったのは、幸村という御馳走を堪能する為だったのに、今ではまるで幸村の為に貞操を守っているかのようだ。 「俺の負け、なのかなあ、大旦那様」 餓えている。 佐助の肉体もそうだが、すでに異能の制御に僅かだが支障をきたしている。 認めなければいけない。 男なら誰でもいい。 誰でもいいのなら、幸村がいい。 「こんばんはー」 「む、佐助か」 いつの間にか幸村は戦の前の高ぶりを抑える術を知った。 夜中まで鍛練する事はなくなり、敬愛するおやかたさまに薦められた書を苦しそうな顔で読んで、やがてそのまま寝てしまう。 そんな幸村を床に連れていき布団をかける佐助の心情を幸村は考えた事があるだろうか。 「ね、旦那。高ぶってるんでしょう。俺と遊びませんか?」 にこりと微笑めば、幸村が怪訝そうな顔を見せる。 膝を滑らすようにその目の前に行く。 邪魔な書を脇に寄せて、下から覗きこんで、笑う。 めくらの恋9
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濃姫 光秀×濃姫(グロ含む) かすが 佐助×かすが(少女漫画風) 佐助×かすが(死にネタ) 痣(佐助×かすが)
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【北条家】 大谷帯刀 (オオタニタテワキ) レベル 45-7 構成 名前 種類 レベル 初期付与 使用技 大谷帯刀 槍侍 45 一所懸命、連撃改系 浅草寺僧 僧 40 風魔下忍 忍者 40 伊豆衆新兵 陰陽師 40 鶴ヶ岡弓兵 神主 40 武蔵鍛冶 鍛冶 40 武蔵野薬売り 薬師 40 特徴詳細 ドロップアイテム 列伝 生年は不明。玉縄城の支城であった相模国藤沢の御幣山砦主として小田原北条記に登場する。帯刀は通名としてもよく使われるので、もしかしたら名ではないのかもしれない。 諸足軽衆に属していた武将で、1569年には武田勢の小田原攻めで小田原城将として戦う。このとき本拠であった御幣山砦は武田勢によって陥落している。 1590年の小田原征討の際は多目周防守(多目元忠かは不明)とともに西牧城を守るが討ち死に。 同一人物の可能性が高い人として大谷嘉信、大谷善俊といった名が挙がるが、実際のところ不明であり、実像不明の人物である。 その他情報 名前 コメント
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「……っ!?」 は、と息を逃がしながら、何事かと佐助を見上げる。 ぼやけ始めた視界の中、佐助は、目の前の、獣は、 にたり、獲物を見付けたように、笑った。 佐助、と呼ぼうとすれば、その前に近付いてきた唇に絡めとられて、言葉を奪われた。 「もう、いいよねぇ……? ちょうだい、ねぇ、」 濡れた音に視線を落とせば、佐助はもじもじともどかしげに腰を揺らしながら、己の女陰に指を差し入れて掻き混ぜている。 解しているのだろうか、だが解す必要など感じられないほどにそこは濡れに濡れ、ひくつきながら目の前の餌を欲しがっていた。 とろとろ、溢れて内腿を濡らすその蜜の、淫らがましいこと。 あの、濡れた肉の感触を思い出して、小十郎は我知らず、ごくりと喉を鳴らした。 男をしきりに煽り、髄まで食らいつくさんとばかりに雄を飲み込むあの器。 あれを知ったが最後、のめり込むしか選択肢は残されない。 果たしてあれに呑まれ、今、正気を、保っていられるのだろうか。 小十郎は己に問いかけた。返すまでもなく、答えは絶望的だった。 くちゅん。そこから指が抜かれる。まるで見せ付けるかのように、透明な蜜が、長く長く尾を引いた。 それに見蕩れている暇など、ありはしない。 小十郎が言葉を失くしているその前で、佐助は、猫のようなしなやかさで以って小十郎の体に乗り掛かった。 ――――来る。小十郎は、見詰めてくるその瞳を、真っ直ぐに捕らえて、見詰め返した。 最後の最後に残った、ぎりぎりの理性だった。 それに佐助は、少し目を瞬かせて、だがやがて、ふわと笑った。 泣きそうに。 それが、戦時、血に酔うて人を殺めすぎたときの、己の肌の白さを眺めるときの、 ……別れ際のあの笑顔と、重なって。 垣間見た、佐助の心。消えることの無い、愛しい闇。 ああ、やはり、これは、佐助なのだ。 どれだけ狂わされようと、この、淫欲の渦に呑まれた忍は、己が愛し慈しんだ女、なのだ……。 今更のように思う小十郎の目に、佐助の頬を雫が一つ、流れ落ちていくのが見えた。 「は、はぁ、ん、……俺を、満たし、てよ、こじゅ……ろ……さ……」 ――アンタ以外のものなんか、全部いらない、アンタが居てくれるんだったら、それだけでいいの。 臍まで付かんばかりに反り返った逞しい一物に、佐助は、己の女陰を擦り付けて、 ああ、と小さく喘いだ。 にちゃ、にちゃ、溢れ出る先走りと愛液とが混じりあっていやらしい音を響かせる。 時折焦らすように腰を回され、互いの股を擦り合わされ、小十郎は、再び熱が押し寄せるのを感じた。 松永久秀の恐るべき計画13
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翌朝。 そう、日の高い内から狂宴は始まったのにもう翌朝なのである。 「Uh-oh・・・・・・べったべただな・・・」 やっと熱から解放され、理性を取り戻して周りを見渡した政宗は嘆息した。 髪からつま先まで乾いてしまってはいるが、かぶったように白濁まみれである。 二人の下にあった敷物はもう棄てるしかなさそうなくらい可哀想なことになっている。 二人は昨日、果てても果てても、もっともっとと互いを貪り、失神することでやっとそれを終えた。 体はだるいが、気分は晴れ晴れしている事に気づき政宗は少し安堵する。 昨日の不安は消えた。愛されていることを言葉でも態度でも示されて満たされたからだ。 「佐助、いんだろ」 どこにともなく声をかけると、佐助が湯桶とともに入ってきた。 「はいはーい。なーに?体拭く? それにしても旦那はいつもよく寝るね。奥方より早く起きたこと無いよ」 とつま先で主を軽くつつき首をすくめる。 「ありがとうな」 しかし脈絡のない言葉を穏やかな声でかけられ佐助は驚いた。 「なにが?あ、お湯?」 きょとんとして声の主を振り返る。 「それもだが、幸村とナシつけてくれたんだろ」 「あー、まあ、ね。早く仲直りしてくれないと俺様のお給金いつまでも減ったままじゃんさ」 ぽりぽりと頬を掻きながら佐助はもごもご言い訳めいたことを言いつつ、桶を置く。 「Ha、I see.I see.そういうことにしといてやるよ」 にやにや笑って政宗は佐助の照れ隠しを容認した。 「ったく、そら、体拭くよ」 ぎゅうっと手拭いを絞った佐助が怒ったように言って政宗の腕をぐいと引いた。 「Oops!そっと頼むぜ」 「ん~、ほっそいねえー。なんでこんなほっそいのにあんな膂力ついてるかなー」 「オイ、ちょっ、どこ触って!?」 手拭いは髪や顔を拭っているのに佐助の左手は不穏に遊ぶ。 「腰~~ぃ」 完全にふざけた口調でなで回す場所を答える佐助。 「あ、やめ、そこ弱いって!やん!」 「あー、ここ弱いのー?」 くすくすと笑い合いながらきわどい擽りっこが続く。 「あー!だめだって!さすがにそこはヤベエって!!変な声出るからぁ」 「えー、だいじょーぶだって!女の子同士だもん!!変な声出してよ~」 傍目にはアブなく映る。 その時だ。 「・・・さーすーけーぇ」 地の底から響くような声が二人の側から聞こえた。 「Oh,darling.目ぇ覚めたか」 政宗は平然と声の主に笑いかける。 「ひ・・・」 即座に固まり、小さく悲鳴を上げた佐助は、そーっと声の方へ首を向けた。 案の定、そこには。 「この幸村のすぐ側で不埒な真似をするとはあっぱれ剛胆な忍であるなぁ・・・?」 鬼の形相の幸村。 「いや、旦那、これは、ね」 だらだら冷や汗をかいて佐助はなんとかごまかそうとするが。 「当分給金なしでござるー!!!」 「うそだろー!?」 朝から大きな断末魔が聞こえた。 その後きっちり一月間、佐助の給金は出なかったが、 政宗のポケットマネーから同等の額の金をもらうことが出来たようだ。 「ほんといい嫁御だわ、うん」 終わり。
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「や、やめ・・・・・・Cut it out!っつってんだろぉ!」 痺れる体で無理矢理跳ね上げた足が油断していた佐助の顎に決まった。 「ぐえっ!」 たまらず倒れる佐助を後目に政宗はそそくさと立とうとするが 「Curses!」 まるで足に力が入らず倒れてしまう。それでも這って逃げようと試みた。 「ちょっとー、ひどくない?」 さすが忍といったところか、即座に回復した佐助が足を掴もうとする。 「ヒ、Get off!さわんな、ボケッ」 政宗があまりにも青ざめた顔で叫ぶので佐助は悲しげに眉をひそめた。 「なんでそんなに嫌がるかなぁ。俺様のことそんなに嫌い?」 「き、嫌いじゃねえけど・・・俺はもう幸村以外の奴には触らせないって決めたんだよ!」 佐助の悲しげな表情にうろたえて政宗は怯んだが、持ち直して叫んだ。 「すごい貞操観念だねー。頼もしいや。でもいま、ソレどーすんの?旦那怒ってるのに旦那に抱いてもらえるの?」 嫌いではないといわれて少し安堵した佐助だが顎の仕返しか意地悪く尋ねる。 「そ、れは・・・無理だろうけど、ともかく他人の手は借りねえ」 「自分ですんの?」 あけすけに言われて、政宗の頬が紅くなる。 「そ、それもなんか・・・幸村がいるのに自分ですんのは・・・」 「じゃあどーすんのさ」 煮え切らない態度に佐助が苛立ちを露にした。 政宗はしばらく考えてきっぱりと結論を出す。 「薬が切れるまで耐えてりゃいいだろ。一晩辛抱すればなんとかなるはずだ」 悲痛な覚悟に佐助は瞠目する。辛いだろうに、それでも・・・? 「Anyway、俺は幸村じゃなきゃ嫌だ」 体の疼きを押さえ込むように自身を抱きしめながらもはっきり言い切る政宗に佐助はため息をつく。 「旦那はいい嫁持ったよ。ほんっとかわいい嫁御だわ。俺様としても一肌脱いであげたくなっちゃうよねー。損な性分だよねー俺様」 ぶつぶつ呟きながら佐助は立ち上がると煙のように消え失せた。 「さす、け?」 一難去ったことにほっとしたが、また一難。 「あ、ひぅ・・・熱い・・・」 安堵したことでどっと薬の効き目が高まったのだ。 手負いの猫のように丸くなると政宗はぐっと目を瞑り、波が去るのをただ待った。 「ゅきむ、らぁ・・・」 抱きしめて欲しいのに。 思い出すのはさっきの険しい顔。 ーー某のためと言って真田の名を汚すのはやめていただこう! そんなつもりなかったのに。ただ愛する人に喜んで欲しかっただけなのに。 「俺ぁ昔っから、ダメな奴だ・・・」 愛して欲しい人に喜んで欲しいだけなのに、愛して欲しい人の心証ばかり悪くする。 ぼろり、と隻眼から涙がこぼれた。 慌てて着物で目をごしごし擦ってふき取る。 「辛ぃ、よ、幸村・・・」 返事は当然返らず、ただ風の音だけがする。 犬もくわねど5
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**** 「伊達ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっぇぇぇぇっぇぇ!!?伊達政宗ぇぇっぇぇぇぇっぇぇぇぇ!??」 「う、うむ。そうだが!?」 「えええええええちょっ、よりによって!?いや、旦那!俺に先に言ってよかったよ! 大将が聞いてたら、すぐさま奥州に大砲ブチ込んでるところだよ!」 混乱のあまり、佐助は立ち上がり慌てふためいた。 「今は同盟を結んでるっていっても、あの独眼竜だよ!?それに旦那、あの人と好敵手だったじゃん!」 「いや、しかし、そうなってしまったものは…意外か?」 「意外も何も…!」 「しかしな、佐助。俺は幸せだぞ」 その言葉に、佐助の動きが止まる。 「お前も先ほど聞いたではないか。『幸せか』と。俺は今まで、このような気持ちになったことがない。 だからはっきりとは言えぬが――――――これは、とても優しい感情だと思うのだ。俺は政宗殿のことを考えると、とても温かい気持ちになる。 優しくしたいし、大切にしたい。共にありたいと思うし、その傍らにこの身を置いていただけるなら、それだけで満たされる。 想うだけでも十分だったというのに、あの方は俺に想われる喜びを与えてくださった。これを幸せと言わずに何と言う?」 「旦那」 「佐助、俺たちはいつ果てるとも知れぬ身だ。だからこそ、より一層慕わしい。愛おしい。恋しい。それは、悪いことか?」 子供だと、思っていた。 幼い頃からずっと見守ってきたから、よけいに。 それが、どうだ。立派に誰かを愛することを知っている。 それが少し寂しいけれど 「―――ゴメン、旦那。俺様が馬鹿だった」 「佐助?」 「そうだよね。旦那が幸せなら、それでいいんだ。俺様は、それを―――旦那の幸せを、守るだけだから」 「……佐助、ありがとう」 「うん」 今度こそ、心からの祝福を。 幼い頃よくそうしていたように、佐助は幸村の頭を撫でた。 くすぐったそうに眼を細めるその姿を、焼き付けておこう。そう、思って。 柔らかな茶色の髪から手を離し、佐助はすっくと立ち上がった。 「じゃあ、行きますか。お茶菓子も持ってね」 「うむ!」 「Ahー?茶菓子ってなぁ、この八橋のことか?」 「そうそう、ソレソレ。京に行ったついでに買ったんだよね」 「俺は佃煮のほうがよかったな」 「某は八橋がいいでござる」 「そうか?まぁ、アンタがそう言うならコレでいいか」 「旦那は甘いもの好きだからねそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!!!!」 「佐助!また口から味噌汁が!」 「なんで自然に話に割って入ってんだていうか唐突過ぎるんだよっていうか勝手に八橋食うなその上茶菓子に文句つけんなァァァァァァァ!!!」 「HAHAHAHAHAHA。オイオイ、そんな一気に言われてもわかんねぇよ」 肩で息をする佐助を鼻で笑い、幸村の恋人であるその人、伊達政宗は八橋を口に放り込んだ。 お館さまがみてる7
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「ふえーん…」 止まったはずの涙が再び頬を伝い始める。 頬を伝う涙は顎に流れ、汚れた着物をポタポタと小さく濡らした。 「まずいなぁ…」と佐助は一人心の中で呟くと、何かかすがの気をそらすものはないかと辺りを見回す。 「あ、かすが!見てみろよ、あれ!」 そう指差す先にあるのは、寄り集まるように咲く幾つもの黄色く小さな花。 かすがの好きそうな可愛らしい花だ。 しかしかすがは花には見向きもせず泣き続ける。 「な、なら…ほら、あそこに鳥がいるぜ!」 続いて指差す先には木の枝に止まり、小さく囀る小鳥。 だがかすがはそれすら見ようとしない。 いよいよ打つ手がなくなった。 どうすればかすがに笑ってもらえるかと悩み抜いた末、佐助は小さく「よし」と決心する。 「かーっすが!」 「…?」 明るく声をかければ、漸くかすがが顔を上げた。 何事か、と涙で潤んだ瞳が語っている。見れば、佐助が顔を両手で覆っている。 と、 「いないいない…ばぁー!」 泣く赤ん坊をあやす際によく使われるその言葉と共に顔を覆っていた手がどけられ、 変な表情に歪められた佐助の顔が現れる。 いきなりのことにかすがは思わず面食らってしまった。 ぽかんとした表情で見つめてくるかすがに、佐助は気まずそうに顔を元に戻した。 気まずい空気が流れかけたその時、 「…変な顔。ふふっ」 噴き出しながらかすがが小さく笑った。 漸く見せてくれた笑顔に、佐助の顔もパッと明るくなる。 ―そう、そんな笑顔が見たかったんだ。 まるで花が綻ぶような綺麗な笑顔に、思わず「へへっ…」とつられて笑う。 なんだか少し照れくさい気もするが、かすがが笑ってくれたので良しとしよう。 佐助は立ち上がると座り込んだままのかすがに手を差し伸べる。 儚く消える背中4
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佐助は待つ道を選んだが、かすがは違った。 彼女は待ったりしない。死んで謙信が作る夜明けの礎になる事こそ彼女の悦びなのだ。 (それで死にたい、か) 佐助は急速に自分が乾いていくのが分かった。 絶望の闇の中、灯に惹かれ焦がれる哀れな羽虫を一体誰が止められよう。 (でもお前――) 言葉にならない苦い思いが佐助の喉を塞いで息を乱す。 自分と謙信は初めから比較にならない。 でも謙信はかすがの命を踏み台にしようとしている。 そこが佐助は気に入らなかった。 結局謙信も千代女も同じだ。でもかすがは喜々として謙信の為に死のうとする。 それも気に入らなかった。 「死んだら…死んじまったらそこで終りだろうが!!」 「――くっ!!」 佐助が渾身の力を込めて放った一撃を受止め、かすがは大きく後ろに飛びすさった。 体勢を直したかすがは改めて苦無をしっかりと握り直す。 佐助を取り巻く風が変わった。 (これが空を斬る忍) 果たして自分に勝てるだろうか。刺し違えれば僥倖だろう。 「うっ……」 あんな眼をした人間をかすがは見た事が無い。 ――無機質な絶対零度の眼。 かすがの背に冷たい物が走る。 後ろの謙信さえ静かに刀に手を添えた。 夜明け前17
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「立てる…って無理か」 言うが否や佐助はかすがに背を向けるように膝を突いた。 「ほら、おぶってやるから乗りなよ」 かすがは戸惑うように佐助の背中を見つめていたが、そっとその肩に手を伸ばし首に手を回すように抱きつく。 佐助はかすがの膝の間に手を入れると「よっと」と軽い声と共に立ち上がった。 「んじゃ、川に行くとしますか」 「うん…」 キラキラと木漏れ日が二人を照らす。佐助はかすがを背負うと歩き出した。 目の前で微かに揺れる少し長めの橙色の髪。かすがはその髪に鼻先を埋める。 柔らかな髪からは、暖かい陽だまりの匂いがした。 「…ねぇ、佐助」 「んー?」 髪に鼻先を埋めたまま小さく尋ねれば、どこか間の抜けた声が返ってくる。 「佐助は…将来忍になるの?」 唐突な問いだったが、実はずっと聞きたかった問い。 佐助は暫く考え込むように沈黙したあと、静かな声で逆に問い返した。 「…かすがは、忍になりたくないのか?」 その言葉に、今度はかすがが黙り込んだ。 暫くの沈黙後、ポツリと小さな唇から言葉が零れた。 「本当は、忍にはなりたくない…。忍になったら、たくさん人を殺さないといけなくなる…。 この着物だって、父さんと母さんがたくさん人を殺したお金で買ってくれた」 かすがは、血が嫌いだった。 つい数秒前まで生きていたものを、残酷に彩る紅。 冷たい身体を染める紅は死の色。 血は全てを死に染める。 だから、人を殺し多くの血を流す忍が嫌いだった。 忍だけじゃない。 武士も、この戦国という世も、流血に流血を重ねるだけの世界が大嫌いだった。 「忍になったらたくさんの人を殺さないといけなくなる。私は、人を殺したくない…」 人殺しをするくらいなら、忍なんかにはなりたくない。 ずっと胸に秘め続けていた、かすがの本音だった。 「かすがは優しいから、忍には向かないな」 ハッと幼馴染の顔を見ると、肩越しに垣間見えた幼馴染は優しげな笑顔を浮かべていた。 まるでかすがの答えが嬉しいとでも言うかのように。 ガサリと茂みを掻き分けると、目の前には小川が流れていた。 いつも遊び場にしている小川だ。 佐助は川から突き出ている岩にかすがを下ろすと、服の裾を破り水に浸した。 儚く消える背中5